英語人気の高まりにつれて、近年ハロウィーンのイベントもさかん。
ベルギーでは、オランダ語(蘭語)、フランス語(仏語)、ドイツ語(独語)の3つが公用語だが、首都ブリュッセルにはEUやNATOをはじめとする1,000以上の国際機関があり、現実的には英語も必須、という特異な国。
3つの地域政府が存在する連邦国家ベルギーで、教育はフランス語共同体、オランダ語共同体、ドイツ語共同体という各言語当局が管轄する。通常、蘭語話者(人口の約60%)の学校では仏語、仏語話者(約40%)の学校では蘭語、独語話者(1%以下)の学校では仏語が必修で、小学校5年生から教科として毎日教えられている。また、これに先立ち「イニシエーション」として、幼稚園や小学校低学年から、第二言語のレッスンがネイティブ・スピーカーの教師によって週2〜3時間のペースで始められる。ことばを耳で聞いて理解し、生活に密着した語いを習得することを目的としており、このやり方は今日の言語習得理論にかなっている。
初等教育の第二言語として、蘭語地域では仏語以外を教える例はほとんどない*が、仏語地域では、蘭語以外に英語を教える学校は少なくない。また、ここ数年、第二言語をイマージョン法で教える学校が急増し、人気を得ている。こうしたイマージョン校では、言語を教科のひとつとして教えるのではなく、教科学習も含め、学校生活そのものを第二言語でおこなう。仏語地域の小学校約1,800校のうち、イマージョン校は現在約150校。その大半は蘭語イマージョンだが、英語イマージョン校も約30校あり、なかには10年以上の実績を持つ学校もある。幼稚園の年長または小学校1年生からイマージョン教育を始め、学校によって、曜日で分ける(例:月水金は母語、火木は第二言語)、教科で分ける(例:数学、科学などは母語、体育、図工などを第二言語)、低学年は100%イマージョンで学年が上がるにつれてその割合を減らしていくなど、さまざまな方法がとられている。
中等教育からは第三、第四言語も学び始め、ベルギー人の多くはマルチリンガルである。物心ついたころから、親せきや近所には自分と違う言語で話す人がたくさんいて、テレビをつけると近隣諸国の番組が原語のまま放映されており、休暇になるとフランス、スイス、イタリアなどに出かける、というように、ベルギーの子どもは日常的に多くの言語にふれながら育つ。そんな環境だから、遺伝子的にも優れた言語習得能力が備わっているのかもしれない。おとなになるころにはフランス語、オランダ語、ドイツ語、英語のほか、スペイン語、イタリア語まで話せるようになっていたりするのである。
文・写真/栗田路子 コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2010年10月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より
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