外国語の授業は、6歳から始まる。
6、7歳は、週1.5時間、8歳〜10歳は週2時間授業がある。
フランスで、英語をはじめとした外国語の授業が小学校に導入されたのは1960年代のことだ。勉強するというよりは、外国語に接する機会を持とうというのがその趣旨だった。
2002年に9歳からの外国語教育が義務教育の一環として定められた。2008年以降は、6歳、7歳のクラスでは週1.5時間、8歳から10歳までのクラスでは週2時間の授業が義務づけられている。小学校卒業時に、「ゆっくり、はっきり、わかりやすく話してくれる相手とならば、かんたんな会話をかわすことができる」程度、つまり、欧州連合共通の習得レベルA1に達することを目標にしている。現在、幼稚園年長にあたる5歳からの外国語の授業も検討中だ。
ただ、何語を学ぶかは学校によって異なり、学習者が選ぶことはできないのが難点だが、現在約95%の生徒が英語を第一外国語として学んでいる。
教材は、カリキュラムにそって、教師が自由に選択することができるが、授業内容はオーラル重視である。6歳レベルでは、あいさつ、1から10までの数、色や大きさ、自己紹介、曜日を言えるようにすることが目標とされている。10歳になると、隣国であるイギリスとクラスぐるみの交換留学をする学校も多い。
しかし、このようなオーラル中心の授業を担任教師がひとりでするのには無理がある*。バイリンガルである語学アシスタントの協力を受けることもできるが、その数はまだまだ少ない。
そこで、教材の一部としてフランスの教育省は、次のようなシステムを開発した。
①ビデオや外国のテレビ番組を授業に使用できるよう、外国語習得のためのウェブサイトを構築。
②2008年から960校でVisio confrence(外国の子どもたちとリアルタイムにテレビ画面上で話すことができるシステム)を導入。
地理や歴史、音楽、美術の授業も外国語習得にかかわる内容になるように工夫されている。たとえば、英語を学ぶ小学校では、歴史の時間にイギリス、フランス間の100年戦争とそのヒロイン、ジャンヌ・ダルクについて学んだり、音楽の時間にはビートルズの歌を習ったりする。これは言語だけを詰め込もうとするのではなく、その言語と背景にある文化もあわせて学ぶことで、言語習得のきっかけをつくろうとする姿勢で、フランスの小学校教育の特徴のひとつかもしれない。
また地方特有の言語**を教える小学校もある。それらは中央集権化の過程で切り捨てられ忘れられていった言語だが、ここ10年でその価値を再認識する動きがさかんになってきている。
*フランスでは、担任教師が、音楽、美術、体育をのぞいたすべての授業をおこなう
**フランスには、ブルターニュ語、アルザス語、コルシカ語、オクシタン語、バスク語など十数の地方言語がある
文/夏樹 写真/Sophie ROBICHON・Mairie de Paris
コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2010年1月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より
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