ニューヨークの小学校英語教育事情

〈ニューヨーク〉論理的な表現力、分析力を身につける徹底した言語力養成プログラム。

「読む力」は絵本の読み聞かせから。最近はパソコンや大きなスクリーンを使うことも。

アメリカの魅力はその多人種、多文化、多言語にあるが、「英語(国語)力」が崩れ始めているというのも事実。そのためニューヨーク州では、子どもたちの正しい英語力養成に力を注いでいる。小学校の教師は独自のカリキュラムをつくり、英語の授業に限らず、社会、理科、算数、野外授業などの教科でも、読む、書く、聞く、話す力を身につける機会を設けている。

まず、 ニューヨークの子どもたちは小さいころから自分の考えや意見をことばにして表現するよう訓練を受ける。幼稚園の段階からShow and Tellで人前での発表に慣れ、小学校ではグループ・ディスカッションの場で、人の話を聞きながら自分の話すことを構成する力、テーマの分析力、自己表現力などを身につける。

「書く」力のトレーニングには、テーマを選び調査結果を書いていく、といったリサーチレポートがある。教師は下書きの段階で念入りな指導をするほか、文法上の訂正はもちろん、スペリング、表現の仕方をチェック。同時に理解力を確かめるためにテキストの章ごとの概略を書かせる「サマリー」にも力を入れる。スペリングをおぼえるため、スペリング・ビーという勝ち抜き戦もさかんだ。ほかにも想像力、独自性に重点を置き、詩においては独特な表現や奇抜な独創性が高く評価される。また、ニューヨーク州では、低学年でも毎月1,000個の単語を書くという目標を掲げている。

「読む」力については、まず読み聞かせから始まる。教師が子どもたちに本を読みながら、要所で質問をしていくという具合だ。次の段階になると、児童のレベルにあわせてグループに分かれ、本の話の展開を予測しながら読み進めていく。最終的にはエッセー、教科書、新聞、雑誌、ウェブサイトなど、さまざまな分野のものを自分で読めるようプランを立てていくわけだ。音の組みあわせでことばができていることを学ぶフォニックスや、the、and、my、is、went、he、she、said、whereといった「サイトワード」という、くり返し文章に出てくることばは、はじめの年におぼえさせていくのが基本だ。

最後に「聞く」力については、読んだ内容や聞いた内容をどの程度理解したかを確かめるために、自分のことばに置きかえて発表させる方法を取る。グループ・ディスカッションやパネル・ディスカッションをおこない、いかに相手の話を正確にとらえ、内容を把握したかを確認する。ドキュメンタリーフィルムやテレビのニュースを素材として使うことも多々ある。

このようにして、ニューヨークの子どもたちは、学校教育の全体にわたって、徹底的な母語訓練の場を与えられているのである。
文・写真/ノーラ・コーリ  コーディネーション/ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2010年8月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より