小学校低学年の女子(左)、男子(右)のあいだで人気の本。
人種のるつぼといわれるアメリカでは、英語を母語としない児童にも英語を母語とする児童と同じように教育を受ける権利がある、という考え方から、公立小学校にもESL(English as a Second Language=第二言語としての英語)、ELL(English Language Learning)という英語を母語としない児童のクラスを設置していることが多い。
イリノイ州シカゴ郊外の北西部にある公立小学校、Thomas A. Dooley Elementary Schoolでは、英語で授業を進めるGeneral Education Classと、英語と日本語の両方で授業を進めるDual Language Class(デュアルクラス)がある。デュアルクラスには、日本人、インド人、アメリカ人など、2カ国語以上の言語を身につけたいと考える、さまざまな国の児童が学んでいる。英語と日本語のクラスがあるのは、この学校周辺に日本人家庭が多いため。地域によっては英語と韓国語、英語とスペイン語といったクラスを持つ学校もある。
アメリカでは、多くの学校でキンダー(幼稚園)から5th grade、または8th gradeまでが同じ校舎で学ぶ。この学校のデュアルクラスでも、キンダーから英語と日本語の両方で授業を受ける。母語以外の言語を習得するにあたってのいちばんの秘けつは、まずそのことばを楽しむこと、その言語のすばらしさやかっこよさを感じることとする同校。英語の授業では、フォニックスの発音をおぼえたり、ライミングワード(韻をふむことば)を理解したりすることによって、どんどん英語を吸収させていく。英語のときは、日本語で考えることなく、常に英語で感じ取ることが大事だという。
では、英語を母語とする子どもが学ぶ通常の現地校の場合はどうだろうか。小学1年生では、自由に絵を描き、その紹介文を英語で書くという授業がある。その際、スペリングは二の次で、まずは自分で考えた文章を、口にする音のまま書き表すことが重んじられる。当然、意味不明の文ができあがるが、「いかに言いたいことを文章にし、音のまま書くことができるかが大事。正しいスペリングは、そのうちできるようになる。今は楽しく英語を学ぶのが先決」と、どの先生も同じことを言う。
また、毎日かならず図書室へ行くことや、本を借りることを推奨する学校は多い。英語を身につけるうえで、読書を通じて読む力をつけるのは王道だ。2年生になると、やはり正しいスペリングや整然とした文章を書く力、読解力などが重要となってくる。宿題の量もこのころからふえ始めるので、英語を母語とする家庭も、そうでない家庭も、親子で心して宿題に取り組まなくてはならなくなる。
文・写真/わきかたまゆみ コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2010年9月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より
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