オーストラリアの小学校英語教育事情

〈オーストラリア〉各州で異なる運用制度。個性を重視する柔軟な教育。

手づくり教材が教室中に飾られている。

授業で学んだ単語は教室に掲示され、毎朝時間を設けて復習する。

驚くことにオーストラリアの小学校には時間割がなく、子どもたちも学校に持っていく教科書があまりない。教育は州の定めるシラバス(学習計画表)にそって進められるが、英語をはじめとする各科目にはそれぞれの目標やゴールが設定されているだけで、あとは担任教師が4週間ごとなど、定期的に時間割をつくり児童に指導する。州によっても制度は異なるが、一例として、ニューサウスウェールズ州の公立小学校の低学年のクラスを紹介する。

英語の読み書きが入門レベルにあたる低学年の子どもたちには、1日につき1時間45分(1週間では8時間45分)が英語の授業にあてられる。子どもたちは、黒板に向かい教科書を広げるのではなく、教室中に飾られた手づくり教材を使って学習することが多い。
たとえば、文法の授業では、先生の手づくり教材や手書きの掲示物などを使って、比較級などその日のテーマを掘り下げる。

読解の授業では、絵本を素材にしたグループ学習がおこなわれる。子どもたちは、はきはきと正しい発音で絵本を読む練習をし、メンバーどうしでストーリーや感想を話しあい、読解力をつけていく。こういったグループ学習は、英語の授業を専門とする教師がサポートし、各グループを学級担任と分担して指導にあたる。なお、授業で使った絵本は家に持ち帰り、家族の前で音読する宿題となる。

スペリングと発音の授業は、歌を通しておこなわれる。子どもたちは新しい歌を学ぶ際、最初に歌詞に登場する単語の意味をみんなで話しあう。教師は子どもたちを正しいこたえに導く手助けをする。
書き方の授業では、シラバスで決められた文字を正確に書く練習をする。

外国語については、国や州の規定はなく、授業の時間数や指導法は各小学校の判断にゆだねられている。教える言語についても、多人種国家オーストラリアだけあって、日本語、中国語、イタリア語、フランス語、イスラエル語をはじめとするバラエティあふれる言語が、学校独自の選択により子どもたちに教えられている。

文・写真/マーシャン祥子  コーディネーション / ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)特集「世界の小学校英語教育事情」より