インドの子どもは一般に、6歳から政府の学校(ガバメントスクール)か、地元のパブリックスクールなどに通い始める。
政府の学校とは、日本の公立学校にあたる。授業料が完全に無料で、貧しい家庭や農村の子どもたちが通うが、ヒンディー語のみでの授業で、英語は学べない。
インドの人材開発省によると、2005年度の政府の学校における初等教育の就学率は98%に達したという。インドの子どもたち全体の約8割がガバメントスクールに通うが、同時に学校数の不足、設備や衛生面の問題、準公用語の英語教育がおこなわれていないなどの課題も多い。
デリーなど都市部の子どもたちは、パブリックスクールに通うのが一般的だ。パブリックスクールとは政府の認可のもと運営される私立学校で、授業料は学校ごとかなり開きがあるが有料。ヒンディー語で授業をおこなう学校と、すべて英語で授業をおこなう学校とがあり、どちらにも英語の授業がある。英語の授業内容は学校別に違うが、平均35 分授業で週6、7コマ。
デリー近郊のあるパブリックスクールでは、毎日1コマの英語の授業があり、月、金曜日は英会話が1コマ追加される。6〜8歳の児童には学級担任が教え、それ以降は担任と英語専科の先生のティーム・ティーチングになる。
英語専科の先生とは、大学で英語を専攻し、3年以上の指導経験を積んだインド人の先生。英語のカリキュラムは、アクティビティから入り、筆記や文法を徐々に取り入れていく。小、中学校で基礎を教え、高等教育でプレゼンテーションもおこなえるレベルまで指導する。授業では、曜日ごとに違うテキスト5冊と英会話用の1冊を使用するが、児童はテキストを持っていない。使い古したテキストから先生が黒板に書いた文を、児童はひたすらノートに書き写す。
その学校の4年生の英文法の授業をのぞくと、文法のレベルは日本の中学2年生程度で、かなりの長文もこなしていた。この学校では11 歳から、英語のほかにドイツ語とフランス語のどちらかを選択し、子どもたちは、週に2回授業を受けている。
文・写真/さいとうかずみ コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より