ある小学校の外観。歴史ある建物だが、一歩なかに入るとカラフルな内装で、日本の幼稚園を思い起こさせる。
アスファルト舗装されたグラウンド。ふだんは子どもたちが駆け回りとてもにぎやか。
リーディングの課題で使用頻度の高い「Oxford Reading Tree」の教材。
イギリスの公立小学校の指導要領は、国の定めたカリキュラムと地域のガイドラインに従い、校長を中心としたスタッフで決める。そのため、地域や学校により差が生じる。たとえば、イングランドとスコットランドでは、教育システムに大きな違いが見られる。まず、時間割については、学期ごとに校長を中心に決めるイングランドに対し、スコットランドでは週ごとに担任が時間割を決める。
英語は、イングランドでは教科として位置づけられ、週に数時間教えられている。読み書き、文法、作文など、内容は日本の国語によく似ている。一方、スコットランドでは、英語は単独で教科として学ぶ時間が設けられてはおらず、算数や理科、音楽などの教科のなかで教えられる。たとえば歴史の授業で、あるトピックについて作文を書く課題が出たとする。歴史について学びながらも、その作文の文法やつづりなど、国語的な要素については、個人別に教師がこまかく指導する。
この指導方法は、クリエイティブ・カリキュラム(トピックに基づいた指導法)と呼ばれ、近年、イングランドでも導入する小学校がふえている。文法や作文だけの指導では、授業内容が広がりにくく、子どもの興味も得にくいことが理由だそうだ。
1クラス20〜30人前後の生徒は、ほぼすべての授業において5、6人のグループに分けられ、グループごとに机を向かいあわせて座る。一般的に授業は、担任と複数の補助教員からなるティーム・ティーチングでおこない、各児童の理解度に応じて、それぞれにあった課題を与え、アドバイスや指導をする。そのため、子どもたちが同時に同じ内容を学ぶことはない。授業を進めるうえでテキストや資料が必要な場合は、学級図書のような形で先生が児童に必要な期間だけ貸し出しをするため、教科書が個人の所有物となることはない。
第2外国語の授業は、多くの公立小学校において3年生(7歳)から導入される。ポピュラーなのは、フランス語、ドイツ語、スペイン語などで、各言語の指導資格を持った英語ネイティブ・スピーカーの教員や該当言語のネイティブ・スピーカーの教員が会話を中心に指導する。また、ウェールズやスコットランドの北部では、その地方の独自の言語であるウェールズ語やゲール語を教えている学校もある。
文・写真/薄井美代子 コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より
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