ネイティブ・スピーカー教師の指示を、アシスタントの中国人教師が補足していく私立小学校の授業。ネイティブ教師を「ウリ」にする私立校は多い。
公立小学校では中国人教師が指導する。小学1年生では、「聞いてこたえられる」ことに重点が置かれ、試験も9割がリスニング問題。
2001年、中国政府は「使える英語」の習得をめざし、小学校に英語教育を導入した。公式には3年生から、週4回以上の実施となる。ただ都市部と農村部では開始時期などに開きがあり、都市部では1年生から開始する学校もある。政府教育部は「児童の自由な表現を認め、こまかい間違いを指摘しない」「教師は児童が自由に英会話ができるように導く」を基本方針として定めている。
深セン市のある公立小学校では、1年生から週5回、英語の授業が組まれ、全国中小学教材審定委員会の審査を通過した教科書と、カセットテープ付きワークブック2冊を使って授業が進められる。授業は、英語のネイティブ・スピーカーではなく、中国人の教師による指導のもと、深セン市教育局教学研究室監修の視聴覚教材が多用される。たとえば、「My body」の単元では、体の部位名を教えたあと、Point to …、Look at …、 Open …、 Close …に単語を入れて、実際に動作をさせてみたり、「My pet」の単元なら、鳴き声や特徴的なジャスチャーをさせながら動物の名前を教えたりと、低学年でも楽しみながら学べるよう工夫されている。宿題には新出単語の書き取りや教科書の音読、ワークブックの練習問題が毎日出る。
5年生になるころには、“Thank you for (teach) us so well.”“She is good at (swim).” などの文で、かっこ内の語を正しく書きかえる問題や、“That mountain is too high. _____ people can get to its top.”という文の下線部に、Few、Little、A few、A littleから選んで文を完成させるような文法問題にもこたえられるようになる。
6年生になると、「ご飯をいためて、野菜を加える」「雨が降り続いている」などの短い英作文にも挑戦する。長文読解問題も多くなるが、英文は「牛肉ギョーザ」「ちまき」など、中国人の生活を説明するのに便利なフレーズを意識的に挿入した文となっている。
学習到達度をはかるための試験もしばしばおこなわれ、「95点以下は要注意、90点以下はほとんどいない」と先生から活が入れられる。あくまでも100点をめざすのが中国の学校なのだ。しかし、子どもたちは楽しく学びながら力をつけ、意欲的に学習を続けているという。今のところ、「政府の作戦勝ち」といえるようだ。
文・写真/武田千夏 コーディネーション/ホリコミュニケーション
●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より
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